植物油と動物油

食卓でもおなじみの食用油の話をしましょう。まず植物油から始めま

しょう。シード(SEED)オイル、種子油のことですね。種から

絞った油です。よくご存知の、菜種、ゴマ、コーン、オリーブ、ひま

わりなどは揚げ油として使用されます。他にもヒマ、亜麻など聞きな

れない油もあります。どちらも工業用油として糸を染色する際の均染

剤や塗料の艶出し剤の原料として使用されます。

次に、動物油。牛脂(ヘッド)、豚脂(ラード)、鯨油、魚油などが

あります。牛脂、豚脂は常温で固体、鯨油、魚油は液体です。これは

住んでいる環境が関係しています。冷たい海で体内の油脂が固まって

しまわないように鯨油や魚油は工夫がされているのです。

その工夫の話の前に油脂の構造を簡単に説明しておきます。グリセリ

ンという化粧品や医薬品、爆薬(ニトログリセリン)にも使われる

水によくとける物質があります。そのグリセリンに以前お話しました

脂肪酸という分子が3つ結合しています。専門的には油脂=脂肪酸

トリグリセライドといいます。トリは以前に出てきたトリオのトリ

です。したがって、油脂の性質を特徴付けているものは脂肪酸

形状ということになります。

脂肪酸は炭素の長い鎖に水素が結合したものです。この鎖の長さと

水素の結合の仕方でいろいろな特徴のある脂肪酸ができます。

一般的に次のような性質があります。

①炭素の鎖が長いほど固体になりやすい。

②炭素と水素の結合が多いほど固体になりやすい。

②で炭素の結合する手がすべて水素で埋め尽くされた状態の脂肪酸

飽和脂肪酸といいます。小学校でならった飽和食塩水と同じ意味で

す。これに対してまだ結合する手が残っているものを不飽和脂肪酸

いいます。もうお分かりですよね。牛脂や豚脂は飽和脂肪酸トリグリ

セライド、植物油、鯨油、魚油は不飽和脂肪酸トリグリセライドと

なります。少し難しかったかもしれませんね。

話材として、鯨油はもちろん現在はありません。その当時マッコウク

ジラの脳油に大変良質な不飽和脂肪酸トリグリセライドが含まれてい

て、欧米諸国が乱獲をして石鹸や化粧品、工業薬品の材料にして繁栄

してきたのです。それが今日の国際的な捕鯨問題の発端であることを

理解(特に欧米人)しておく必要があります。