陰イオン(アニオン)界面活性剤
では今日は陰イオン界面活性剤についてお話します。「陰」とありま
すので陰気な感じがするかもしれませんが、化学物質に陰気も陽気
もありません。乾電池を思い出してください。マイナス極(−)を
陰極、プラス極(+)を陽極といいますよね。日本語ではマイナス
とプラスを陰陽と表します。
さて、陰イオン界面活性剤の得意分野は様々な洗浄です。石鹸や
ボディーソープ、シャンプーなどがその部類です。高い泡立ち
と強い洗浄力で、皮脂を包み込むように洗い流し、清潔に保ちます。
繊維に付着した皮脂がなぜ洗浄できるか簡単にご説明しますね。
界面活性剤には油に良くなじむ部分と、水に良くなじむ部分がある
ことは以前お話しました。それぞれを親油基、親水基と言います。
洗濯機の中で、界面活性剤が油汚れに近づいてきて、親油基が油汚れ
に突き刺さります。たくさん突き刺されば、油の回りは親水基にな
ります。こうなると洗濯液中に溶け出すことができ、繊維から油汚れ
が剥がれます。もっと具体的に言えば、アンパンを油汚れに例えると
その回りに数十本の「チュッパチャプス」が刺さっている状態を
想像してください。もはやアンパンではなくなっています。飴の部分
が親水基で持ち手(刺さっている)が親油基です。
但し、この陰イオン界面活性剤は前回出てきた水の硬度で洗浄力が
影響されます。特に石鹸はその傾向が強く、みなさんもそうとは
知らず体験されていると思います。石鹸で身体を洗って、タオルを
洗面器で濯いだときに、何やら白いカスみたいなものが浮いてきま
せんか?中には「垢がよくとれた!」と思っている方も居られるかも
しれません。もちろん、垢も含まれていますが、大半は石鹸が水に
含まれたカルシウムやマグネシウムと結合して、溶けにくくなった
金属石鹸というものです。このごろはボディーソープが多くなりまし
たが、ひと昔前の温泉地の石鹸が泡立ちにくいのを経験的に知って
居られる方も多いと思います。温泉成分は一般的にミネラルが多く
すぐに金属石鹸になって泡立ちが失われてしまうからです。石鹸以外
の陰イオン界面活性剤の洗浄剤はこの硬度成分の影響が最小限になる
ように合成されていますので、是非お風呂で両者の比較実験をしてみてくださ
い。