天然繊維もポリバケツと同じ
前回、ポリバケツの話で「エチレン」や「塩化ビニル」という分子が
たくさん並んだ「ポリマー」だと説明しました。
実は全ての繊維はこのポリマーなのです。天然繊維の絹も羊毛も綿も
合成繊維のポリエステルもナイロンもアクリルも、構成物質が異なり
ますが、みんなポリマーです。絹とナイロンで説明します。
絹は蚕さんが桑から原料を抽出してたんぱく質を構成します。その原
料とは、今では清涼飲料水にも配合されている「アミノ酸」です。
よく耳にするアミノ酸としてグルタミン酸があります。そう、味の素
です。人間もこのアミノ酸がなかったらすぐに死んでしまいます。
簡単に言えば、お肉や魚(たんぱく質)を食べて、胃腸でアミノ酸に
分解して、そのアミノ酸を再度必要なたんぱく質(筋肉など)組織に
変換しています。生きていくために約20種のアミノ酸が必要です。
これを必須アミノ酸と言います。
絹も18〜20種類ぐらいのアミノ酸がランダムに繰り返して繋がった
構造をしています。
アメリカにデュポンという大きな化学会社があります。この絹の構造
を真似できないかと研究し、2種類の物質を反応させることでポリマ
ーを作ることに成功しました。今から75年ほど前、カローザスという
研究員が発明しました。これが最初の合成繊維ナイロンです。逆に言
えば、まだ合成繊維ができて100年もたっていないのです。
女性のストッキングは高価な絹でしたが、安いナイロンで爆発的な
人気商品となりました。でも当初は蒸れて蒸れて仕方がない製品だっ
たらしいですよ。
その後、ナイロンも研究が進み改良されていますが、合成絹は未だに作れ
ないようです。蚕さんはやっぱり凄い。